以下の文は平成11年山形新聞の「提言」に掲載された蔦幹夫の大樽川に関する文です。

              提言                     

                                   大樽川を考える会事務局長 蔦幹夫
 
「サクラマスの遡る川づくり」、それが私たちの夢。今年の秋から、最上川の源流・大樽川で
自然と温泉に配慮した渓流環境づくりが始まる。

 かつて、小野川温泉地内の大樽川の河川敷にはゲンジボタルが乱舞していた。東日本で

は珍しいとされる大きい河川での発生地であった。温泉の宿泊客が下駄を履き、ゆかた掛

けで川面に舞う蛍を観賞し、川遊びもできた空間があった。ところが、平成元年8月の鉄

砲水で、河川敷の蛍の生息環境はことごとく流失した。それは、小野川の約6`上流の関

地区で川を高速道路のように一直線にした砂防工事の流路工が完成した直後のことであっ

た。川はコンクリ−ト護岸で直線化され、落差工が階段状に連なり、石が平らに敷き詰め

られた荒漠たる川になっていた。皮肉なことに、環境庁の「ふるさといきものの里」に指

定された年の出来事だった。         

 平成7年5月に、小野川の直上の3,5キロ区間で「大樽川荒廃砂防工事」が行われると

の説明が地域住民にあった。関地区で行われた工事と全く同じ、川を直線化する流路工計

画であった。

 小野川温泉は上流域の山野で育まれた河川水や地下水が涵養され泉源になっていると考

えられており、また、大樽川の自然は地域住民にとってもかけがえのない財産である。工

事による自然と温泉への影響は重大な関心事であった。

 平成7年11月に、地元の11団体は、大樽川は山形県の宝であるとの認識のもと、自

然・温泉の事前調査を要望し、平成9年6月に、「大樽川を考える会」を設立した。調査

が進む中、調査を分析し、計画を検討、工事を見守る為、学識経験者を交え、地域住民と

行政が協力し、良好な川づくりをめざす検討委員会の設置を要望した。そして、平成10

年7月17日に第一回検討委員会が開催された。

 渓流の自然環境調査では、魚類・底生動物・植物・鳥類・陸上昆虫類・ホタル類・両生

類・は虫類・ほ乳類すべてにおいて貴重種が確認され、自然環境の優れた、極めて貴重な

自然資源を有する地域であると報告された。温泉調査では、地下水や河川水の水位を保ち

温泉を涵養する必要性があるとの結論であった。これらの調査結果に基づき、自然や泉源

に配慮して工事は必要最小限に止めることが提案された。

 現在、河床が低下し続けているのは、上流部の砂防対策工の進捗により、下流部への土

砂供給が止まったためと考えられている。対策としては、自然の河岸を復活することによ

り土砂供給を促すと共に、遊水池を作ったりする方法が考えられる。また、河川水や地下

水を涵養するために上流部や周辺の森林を針葉樹から落葉広葉樹に変えることも必要であ

る。河床維持のためには(、表面から見えない自然な形の)床固工や帯工も必要な場合も

あろう。結果として、河床の低下が止まり、泉源が涵養され、魚も遡上し、豊かな自然が

蘇ることになる。

 私たちは、蛍が川で乱舞し、県の魚サクラマスの遡上する、子供達が魚を捕まえたりで

きる大樽川に再生させたいと思う。サクラマスの遡上は小野川の直前でストップしている

。東北電力の取水堰が障害となっている。県・市・地元住民、そして東北電力の協力を得

て、最上川の源流・大樽川にサクラマスを遡上させ、全国のモデルとなる「サクラマスの

遡る川づくり」を推進したいと考える。

 第7次米沢市総合計画に自然体験学習施設の計画がある。今回の渓流環境調査で確認さ

れた数々の貴重種の生息する環境を守り、大樽川の自然資源を保全・活用しながら未来に

継承して行くために、大樽川の豊かな自然を背景にした自然とふれあえる生態園づくりを

「サクラマスの遡る川づくり」の一貫として提唱したい。その中に、米沢市に寄贈されて

る東北一の「山谷昆虫コレクション」を展示できる博物館機能を持った施設を実現させた

い。母なる川、最上川の源流「大樽川」は自然あふれる川であり続け、そして、自然教育

の発信基地として、源流部から県全体へ、自然が豊かであることを拡げたい。