米沢ホタル愛護会の水保全活動

 

蔦 幹夫(山形県米沢市)

 

はじめに

米沢ホタル愛護会は、身近な自然のシンボルのホタルの自然生息地の保全・再生を行い、ホタルだけでなく地域固有の多くの生き物が生息する地域づくりを目的に活動している。ホタルが生息していれば、多くの生き物の生息が可能であり、人々にも住み良い地域である。米沢ホタル愛護会の活動は住み良い地域自然づくりをめざしているとも言える。そのため、数々の地域活動に参加・協力している。

1、      ホタルの保護活動

米沢市にはゲンジボタル・ヘイケボタルの自然生息地がある。特に、小野川地域ではこれらの自然生息地が多く、東日本型ヒメボタルとしては珍しく南1キロと3キロの標高約330〜350Mにヒメボタルが道路側の雑木林に生息している。当会はこれらの自然生息地の調査・生息状況の確認、未発生地・生息しなくなった場所の継続観察を行っている。ホタルの自然発生地は民有地であり、所有者へのホタル保全・再生のアドバイスの啓蒙活動も実施している。ホタルも生息する自然環境を次世代に継承するため、ホタル観察会や学習会の実施・協力も行っている。ホタルの移動で遺伝子の分布の撹乱が心配される中、ホタルの飼育や放流を行っている団体や学校がある場合、ホタルの地域の固有性や生態系を考慮するように助言している。

2、  小野川温泉とのコラボレーション

 小野川温泉は「住み良いまちは訪れたいまち」を目的に、「ハードからソフト、そして、ハートのあるまちづくり」を行っている。ホタルが生息する温泉地は住み良い、訪れたい温泉地と言う。小野川温泉では26年前から「小野川温泉ほたる祭り」を行っている。観賞地は「小野川ほたる公園」を会場とし、主催の小野川温泉観光協議会が管理するホタルの水路があり、当会が助言・協力をしている。観光客が多く訪れるが、ホタルの発生量を競うことなく、自然発生させている。幼虫やカワニナを放流することなく、生息水路の水管理・草刈・泥上げを行い生息地の維持管理をしている。情報化社会が進展する中、宿泊客は「露天風呂がありますか」より「源泉掛け流しの湯ですか」の問い合わせが多いと同様、「ホタルは養殖ですか、自然発生ですか」の質問が多いと言う。本物志向が観光客・観賞者に定着しつつある。また、小野川河川愛護会と協力し、大樽川の護岸の草刈、アジサイの護岸花壇の管理、河川敷・河道のゴミ拾いを行っている。

3、自然と治水が調和する川づくり

 ホタルの生息地の減少への危機感と同様に、河川改修などにより、瀬や淵の連続性がなくなり、魚の減少に危機感を持ち、各種提言を行っている。小野川町の大樽川上流部の3.5キロ区間の自然河道に、河川改修計画があった。現存する自然河道を壊し、直線的な川床を作り、護岸に芝を植える計画であった。この計画に対し、当会も参加して、関係12団体で「大樽川を考える会」が組織され、自然と治水の両立をめざした。1998年に地域住民・行政・専門家から構成される「大樽川砂防工事検討委員会」が設立し、工事計画は変更され、今ある川床に手をつけず、川幅を拡げる自然と治水が調和する計画となった。大樽川の健全なる水循環をめざし、人間社会の営みと水環境の調和を図る川づくりを行い、山形県の魚サクラマスが遡上できる川に復元し、地域ぐるみで川づくりを行うため、「サクラマスの遡る川づくり」をコンセプトとした。

4、産廃最終処分場の反対運動への参加

 山形県には産業廃棄物最終処分場が20箇所許可されているが、半数の10箇所が最上川源流域の米沢市にある。東北最大級の容積230万立方メートルの産廃最終処分場も稼動している。大樽川の支流の大田川近くに産廃最終処分場があり、悪臭や鳥害の被害があり、水質汚染を問題視している。これに隣接する新規の産廃最終処分場の工事計画がある。山形県の「母なる川最上川」源流に「これ以上産廃はいらない」と米沢ホタル愛護会も参加し、「産廃から最上川源流を守る会」を2003年に設立し、行政等に要望書・公開質問状や反対署名の反対運動を展開している。

5、川の生き物調査・川遊び

 ホタルだけでなく地域固有の多くの生き物が生息する地域づくりの一環として、地域を知る活動で、2004年に大樽川の水生生物調査を行った。子供たちが水生生物学習会に参加し、川の中の生き物を知るだけでなく、川に親しむことで、より良き水環境を子孫に引き継げる。これを発展させ、持続可能な方法として、小野川温泉と連携して、エコツアーの実施を検討している。自然体験・自然教育で交流人口を増やし、経済活性化ができる。

おわりに

 地域の諸問題を行政に全て任せるのではなく、行政と協働し、地域の主体者として、「自分たちの地域は自分たちで守り、育てる」理念が地域にはある。この理念は地域のホタルを自分たちで保全・再生しようとした思いが原点と言える。

 

引用文献

鈴木浩文・東京ホタル会議 2001、ホタルの保護・復元における移植の三原則、全国ホタル研究誌(34:5-6

関谷仁志 2003、地域振興と観光客誘致 小野川温泉の取り組みかた、運輸と経済